2013年2月23日土曜日

岩田英哉著『鏡の王』を読んで



これは、Google+で知友のMian Xiaolinさんの書かれたわたしの短編小説『鏡の王』についての感想文です。

このような感想をお寄せ戴き、誠にありがとうございます。また、ひとさまに批評されて、その言葉に接することで、わたしを外側から眺める素晴らしい機会となりました。

以下に引用致します。


こんな疑問を持ったことはないだろうか。哲学者というのは、小難しい理論体系を作り上げているが、その成果は実生活とどのように結びついているのだろうか、と。たとえば『存在と時間』で知られるハイデッガーは、この著作をものにする3年前、大学の教え子と愛人関係になっている。その当時既婚者だったハイデッガーは愛人との享楽の時間を持ち続け、3年後に『存在と時間』を出版した。いったい、哲学者の頭の中身はどうなっているのだろうか。

あるいは、安部公房は20歳の時に『詩と詩人』という小論において、独自の哲学を展開している。彼の生涯の著作は、なんらかの形でこの『詩と詩人』で展開された理論に結びついていると言ってよいだろう。この『詩と詩人』において孤高への到達を強く意識した安部公房であるが、その一方で後年の小説において、彼は他人との触れ合いを切実に希求する姿を垣間見せている。両者はどのようにして両立しうるのか?

この問に真正面から答えようとするのが本書、『鏡の王』である。ナンセンスなドタバタ劇の体裁をとっていて、実際、あちこちで笑いを誘うが、その笑いと並行して、孤独と悲しみが疾走している。

鏡の王は、『円錐』城または『静寂』城と呼ばれる城の主である。円錐城は理性空間を示唆している。王は「自らの属する時空の最上位概念に至ることのできる、その様な人間」だと自分を定義しつつも「朝起きて、気分がすぐれず、集中力を欠くと、私は、機能的人間の最下位概念たる、寒空の下の乞食(こつじき)に、そのときは、なるな」などと自壊する。そしてまた「この山巓から平野部を遥かに見晴らかす城に、私をして私自身というものが存在するかと見えしむる事もあれば、我は此の石造りの牢獄に囚われの身ならんかと、また、私をして疑わしむる事もあるのだ」と言う。この辺りまでは、安部公房が『詩と詩人』の中で展開した理論とも対応している。実際、概念の上にさらに上位の概念を構築していく「次元展開」という抽象概念を小説の中で具現化して提示している。

この小説のユニークなところは、円錐城の「外」が存在する点にある。その「外」を表す重要なシンボルとして「シロナガスクジラノセイキ」がある。ホルマリン漬けになってシロナガスクジラの雌雄の生殖器が屹立しているのだ。これは、理性による作用とは独立して、大きな作用を示すものがあるという暗示として捉えられる。俗な話ではなく、たとえば脳にしても、大脳が司る部分と小脳・中脳が司る部分があって、これらはどちらも僕たちが生きていく上で重要な役割を果たしている。どちらか一方で生きていくわけにはいかない。

さて、円錐城の外には、居酒屋も存在する。そして、どうやら居酒屋の店主は、鏡の王の別の姿であるらしい。理性的活動の主が、また居酒屋の主でもあるという点に、先に挙げた理性的活動と日常生活とをどう両立させるかという視点が見え隠れする。

短編小説なので、これ以上書くとネタバレになってしまう。興味のある方はぜひ購入して読んでいただきたい。最後に、この短編小説は、ここGoogle+でお世話になっている +Eiya Iwata さんの作品であること、およびこの短編小説は1995年第3回パスカル文学賞の最終候補に残った作品であることを申し添えておきたい。


追記:
『鏡の王』は、次のアマゾンの書棚で買う事ができます。キンドル本です。

2013年2月20日水曜日

『鏡の王』という短編小説を、アマゾンのキンドルで出版しました。




『鏡の王』という短編小説を、アマゾンのキンドルで出版しました。

この短編小説は、1995年第3回パスカル文学賞の最終候補に残った、わたしの初めて書いた小説です。

これは、今、遁走倶楽部の大きな題名の元に書かれる一連の作品の嚆矢となる作品です。

わたしの創作の種子がすべて播かれております。

この小説は、どこにもない、この世ならぬ世界を描いております。

シュールレアリスティックな、時間のない世界です。

鏡の王の言葉と、その書記官の報告するレポートとが、内と外が入れ替わるようにして、記述され、読者を迷路に誘い込みます。

とにかく、読んで楽しい、ナンセンスの短編小説です。

読んで時間を無駄にした、このお金を払ってもったいなかったというひとは、居ないと確信しております。

もし金額に値しないと読後に思った方は、ご連絡下さい。返金致します。但し、送料はお持ち戴けると、ありがたく思います。

返金保証などというのは前代未聞。日本の出版史上初めてではないでしょうか。

ご興味があれば、お買い求め下さると、ありがたく思います。

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