2017年2月1日水曜日

ポスト真実(2):ピューリッツア賞受賞『黒い旗』

Schwarze Flaggen Der Aufstieg des IS und die USA

これは今月ドイツで出版されるISとアメリカ政府の繋がり(アメリカ政府によるISへの支援)について書いた本で、この著者のJoby Warrickは、ドイツ語の紹介記事によれば、1996年以来ワシントンポストの記者とあり、この本で二度目のピューリッツア賞を受賞してゐます。Pulitzer.orgのウエッブサイト上の著作に関する発表記事です:http://www.pulitzer.org/winners/joby-warrick

ドイツ語訳の題名を日本語にすると、『黒い旗』となり、副題が「ISの台頭とアメリカ合衆国」となります。英語の原題は、『Black Flags: The Rise of ISIS』:https://www.amazon.com/Black-Flags-Rise-Joby-W…/…/0804168938

ドイツ語訳が2月に出るといふ事は、既にアメリカの国民は此の著作を読んでゐる訳ですから、出版が2016年であつて、授賞式が同年の 4月18日である此の著作をアメリカのジャーナリズムが読んでゐないわけがありません。現にニューヨークタイムズの書評の言葉が英語版の表紙に印字されてゐます。

といふ事は、オバマーヒラリーが敗北し、トランプが勝利して大統領になつたについては、少しも番狂わせなのではなく、この本の深い影響もあるのではないでせうか。

今Googleで検索しても、この本の日本語訳の気配はありません。日本のジャーナリズムは、読んでゐないと考へられます。英語に堪能なジャーナリスト以外は。しかし、それでも読んだといふ声が上がらないのは、日本には知られてゐないといふことなのでせう。

この方面からの報道を、ネットのメディアに期待をします。地上のメディアの言語能力と読解力には全く期待をしてをりませんので。


ISの使用してゐる「黒い旗」または「黒旗」の意味については、このURLで知ることができます:http://ikeuchisatoshi.com/i-1203/

2017年1月29日日曜日

「ポスト真実」とは何か:現代の情報空間について

欧米のジャーナリストたちが今、現代の情報空間の特徴を「ポスト真実」と呼んでゐるさうである。これを聞いて知った、言語の世界から眺めたわたくしの感想は以下の通り:


現代の情報空間の特徴を「ポスト真実」と喝破した欧米のジャーナリストの見識とセンス、だとは私は考えません。

何故なら、これまでもポスト・モダンと言ったり、ポスト何何といふ名前をつけて
欧米人は来ましたが、これは結局私の所見によれば、ものを考えないことからくる苦し紛れの命名なのです。

ポストがあれば、プライアー(piror to)があるわけで、何を言いたいかと言いますと、時間の中でだけ、時間軸だけでものをかんがえようとすることから逃れられてゐない欧州人、白人種の当座の凌ぎであらうと思はれます。

この大陸の白人種たちは、学問の分野にあっても、異領域や隣接領域との知識の共有をしておりません。やはり欧州にも社会的組織的に知的劣化が起こってゐるのだと考えてゐます。(この根拠を言えば話がながくなるので省略しますね。)

ですから、今Wikipediaを参照しますと、次のやうにあります:

「ポスト・モダニズムという用語自体は1960年代にも確認することができるが、ポスト・モダニズムという用語が今日的な意味で使用されるようになったのは、チャールズ・ジェンクスの『ポスト・モダニズムの建築言語』(1977年)が最初であり、建築・デザインの分野で盛んに用いられた。ジャン=フランソワ・リオタールが『ポストモダンの条件』(1979年)を著すと、フランス現代思想界に大きな影響を与え、その影響はアメリカを中心に広がりを見せ、やがて分野を超えて大きな時代の潮流を形成するに至った[2]。」

この説明を見ますと、既に1960年代に予兆あり、1977年には大ぴらになった(欧州において)といふことになります。(私が上で述べた判断の根拠も、やはり建築の世界の様式についての概念を定義できないドイツのprofessor(professorですよ!)の著書を読んで知ったことです。もちろん、著書自体は素晴らしい欧州横断的な説明と資料の満載の良い本でした。つまり、しかし、この大学教授は自分の専門において体系的な分類と叙述ができないといふことに結果としてはなりますね。)

1977年には遅くとも、欧州の知的劣化は明瞭に専門家たちに意識されたといふことになります。今欧州の統合体であるEUの歴史と関係がないかと見ますと、Wikipediaには、次のやうにあります:

「• 1958-1969年
フランスのシャルル・ド・ゴール大統領の影響が大きい時代。欧州統合の国家連合的性格が強まった時代。
1970-1985年
1970年の欧州政治協力(EPC)の発足、経済通貨同盟(EMU)の試行や、1979年の欧州通貨制度(EMS)の設立、それに伴う欧州通貨単位(ECU)の設置などに見られるように、欧州統合の進展は見られたものの、2度の石油危機もあり、それぞれの欧州国家は内向きであった時代。」

この記述を見ますと、欧州の統合と何か符節を合わせてゐるやうに理解することができます。欧州の統合と共に、ポスト・モダンが現れた。つまり、globalismの完成してゆくプロセスの中で、ある一線を超えて現実性が高まって、可能性が蓋然性になった時に、

とすると、欧州のポスト・モダンが現れた。といふ事が出来るのではないでせうか。

とすると、今や2016年の英国のEU離脱の事実と現実を前にして、欧州の統合が危殆に瀕してゐる時に、「ポスト真実」”post-truth”が問題になってゐる。事実そうであり、トランプの大統領就任は、 アメリカも含めたglobalismの崩壊を意味してゐます。

今度の、欧州人やアメリカ人、即ち白人種による命名が、post-modernといったやうな時代区分に関する命名ではなく、物事の理非曲直、即ち真理、truthといふ人間の思考の根底、根本に関する命名であるといふ事が、田尻さんのおっしゃる「現代の情報空間の特徴」を明らかに言い表してゐると思ひます。

これは、欧州文明にとっては危機的な状況です。

ですから、本来ならば、近代に確立した哲学の歴史に戻って、言語と論理と思考の領域での、彼らの学問の上での最高度な思考の階層での見直しをなすべきなのです。即ち、この方面からいっても、globalismといふ共産主義(communism)の見直しです。これをやれば、コロンブスがアメリカ大陸を発見したのではなく、誰がコロンブスを発見したかを論じ、自らの近世近代の罪深い歴史を反省することになるでせう。これは、良いことであり、今起きてゐることの、それこそ時代の趨勢であると私は思ひます。

としてみれば、上の言及したドイツの建築の専門のprofessorが学際の共有をしてゐないといふ知的劣化のことと同じことが、やはり政治と経済で起きてゐるといふことになります。


Globalismが学際的な国を超えた共有を劣化させ、anti-globalismが、これを求めるといふのは、皮肉といえば皮肉ですが、しかし、これは逆説などではなく、これこそ真理、truthであると私などは思ひます。何故ならば、差異のないところに共有はありえないからです。この差異を同類の別の言葉で言い換えても変わりません。民族自立自決といい買えると、今とこれからの日本の少なくとも数百年を考える議論になりますね。そのやうな議論をすることを、もはや増すゴミには期待してをりませんので、ネットメディアにはお願いをしたいと思ひます。